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これから100年の
「ふつうの学校」をつくる

Creating a new/old school for the next 100 years.

学校という
コモンズを再発明する

新留プロジェクトは、ひとつの小さな小学校をつくることからはじまります。
しかしその射程は、教育を起点に、地域と社会のあり方をアップデートし、世界の未来に対してひとつの突破口をひらくことにあります。

私たちはいま、気候変動の加速、AIの進化、国際情勢の緊迫化という、人類史的な転換点に立っています。国家や経済成長といった「大きな物語」が揺らぎ、人間が人間であることの意味そのものが問い直されています。

そのとき最も根源的に問われるのは、人はどう育ち、問い、学び続けるのか、ということです。

近代の教育は、国家と産業化の要請に組み込まれ、地域のコモンズや暮らしの感覚を切り離してきました。
そしていま、経済がグローバルに拡張する一方で、子どもたちの世界はスマホサイズに縮小しています。

だからこそ私たちは、「学校」というコモンズ(共有地)を、いま一度再発明しようとしています。

世界を里山サイズに取り戻す

学校とは本来、多様性に満ちた世界の中で、お互いの自由を認め合いながら、ともに学び、ともに育つ場でした。学びとは、国家のためでも産業のためでもなく、人間が豊かに生きていくための営みでした。

それらを取り戻すための鍵は、日本のローカルにこそあります。

日本の津々浦々には、世代をこえた学び場としての「学校」と、人と自然が重なり合う「あわい」としての「里山」が存在してきました。
そこでは、身体と知性、人と人、人と自然を分断せず、世界をつながりの中で捉え、共に生きる感覚が育まれてきました。

新留小学校が目指すのは、こうした世界との関わり方を、身体感覚とともに、現代の公教育の中で実装し直すことです。

それは、失われつつある循環と手触りを取り戻し、気候変動やAI時代における人間のあり方そのものに応答する試みでもあります。

人はどのように学び、
どう生きていくのか

これからの公教育のあるべき姿は、身体性と暮らしに根ざした深い学びです。

学びが深まるほどに、人と人とのつながりが育ち、地域の営みや自然との関係が回復していきます。流域や里山のように、人・文化・産業・自然が循環する、手触りのあるスケールで世界を捉え直す。その世界観を実践する学びの場を、私たちは「SATOYAMA SIZING SCHOOL」と呼んでいます。その総体が、地球スケールで普く通ずる「ふつうの学校」です。

世界を里山サイズに取り戻す。
学びと暮らしと自然が分断されない社会を、小さな半径から実装する。

新留プロジェクトは、鹿児島の小さな廃校から、
世界中のローカルへと、
「人はどのように学び、どう生きていくのか」
という問いを投げかけていきます。

「(小学校は)みんなでくすくす笑いながら面白いことを考えたり、手を握り、体をぶつけ合っていっしょに新たな世界を探検し、体験する場所なのである。」

山極 壽一氏

霊長類学者

システムチェンジに向けた
3つのアプローチ

  1. 1 AI時代における学びの
    再定義と構造転換

    身体性を起点とする学びのリデザイン

    子どもの学びは、10歳前後を境に質的な転換を迎えます。その時期までは、暮らしの中で得た身体的な感触を手がかりに、世界を理解していきます。

    その後徐々に、目の前にない出来事や直接経験していない関係を、言語や数字などを通して理解するようになっていきます。因果や構造を捉え、他者や社会の視点を取り入れながら、より抽象的に世界を理解する段階へと移っていくのです。

    この転換を支えるのは、それまでに積み重ねた具体的な出来事を、身体感覚から言語や数字、図といった記号へと結び直してきた経験の多さです。友達と何かを平等に分ける、長さを比べる、やってみる、うまくいかなければやり直す。そうした経験が、身体感覚を伴った思考の基盤となります。

    知識の先にある学び

    AIが知識を扱える時代において、人間の学びは、「何を知るか」だけでなく、「知識をもとに世界とどう関わり、どう行動するか」へと問い直されています。
    産業革命と情報革命を経て、私たちの暮らしは便利で豊かになりました。その一方で、自然やコミュニティ、そして自分自身の身体感覚との接点は、暮らしの中で少しずつ見えにくくなっています。

    本来、小学生の期間は、他者や自然と出会ってみたり、模倣してみたり、試したり、共有したりしながら、自分と世界との関係を広げていくかけがえのない時間です。遊びや暮らしの中で、身体を通して世界と関わる。その経験が、知識を自分のものとして使い、現実の中で行動する力につながっていきます。

    また、私たち大人がそう過ごしてきたように、子ども期はもっと自由に、もっと豊かに楽しむべきであるとも考えます。遊び、寄り道し、夢中になり、失敗し、誰かと笑い合う。そうした一見すると「学び」とは呼ばれない経験こそが、この時期の健全な成長にとって大切な時間なのです。

  2. 2 学校を起点とした
    社会基盤の再設計

    新留小学校が大切にしているのは、地域を「教材として使う」ことではなく、子ども自身が生活者として自分を取り巻く世界と直接関わることです。
    子どもが認識できる世界の広さは、成長とともに広がっていきます。
    新留小学校では、 学校という共有地(コモンズ)を起点に、

    ・低学年:自分の暮らしに直結する半径 約300m ほど
    ・中学年:地域の人や生業が見えてくる半径 3km ほど
    ・高学年:自然・産業・社会構造を捉える半径 30km ほど

    と、子どもたちが自分の感覚で理解できる範囲を無理なく広げていく設計をしています。
    理解が深まるにつれて、地域は単なる風景ではなく、自分が関われる対象になります。

    こうした学びが積み重なることで、学校を中心に、人・文化・産業・自然が結び直され、 地域の資本が内側で循環する構造をつくります。
    私たちは、学校という地域の共有地を、学びの場であると同時に社会基盤を更新するためのハブとして再定義します。

  3. 3 再現可能な実践モデルを
    全国へひらく産学官イニシアチブ

    AIによって意思決定や思考の外部化が進むほど、人間が生まれながらに持つ身体性と、多様な人や自然との関係性の中でことばを交わし、学び合うことが、次の時代の創造性と共感力の源泉になります。
    私たちは、企業の次代を担う人が育つ環境づくりまでを射程に、社会全体の学びの土台をアップデートしていくイニシアチブを立ち上げます。

    人の「学び」の原点である保育園~小学校での実践を起点に、関係性と循環を体感しやすい小さな半径を土台として、AI時代にこそ必要となる教育・人材育成の研究と実践を全国スケールで広げていきます。
    「学び方」そのものを変えていくことで、より豊かで持続可能な社会が生まれていくと考えています。

    座長には、入山章栄 氏(経営学者 / 早稲田大学ビジネススクール教授)が就任予定です。

「食」と「ことば」

新留小学校では、食とことばを、学習指導要領での学びや、生涯を通しての深い学びを下支えする土台とします。

「食」は、身体を自然や社会と接地させ、生命の循環を身体で感じ、理解するための出発点です。五感を使い作って食べるという行為は、具体的な経験の中で思考し、試行錯誤し、振り返る営みそのものです。また、共に食べることは、ほどけかけた人と人との関係を心地よく紡ぎ直し、愛された記憶として子どもたちの強くしなやかな根っこを育てます。

一方、「ことば」は、日常の具体と抽象的な概念をつなぐ橋であり、対話を通して思考を深め、他者と共有することで、知性を社会へとひらいていきます。

具体的な経験を積み重ねる「食」と、その経験を思考へとつなぐ「ことば」。この二つを往復することで、身体で感じたことを知性へと育て、やがて世界を自分の頭で捉え、自分の意思で行動できる力へとつないでいきます。